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流体&画像処理まとめ3選

はじめに

こんにちは。

近年では物理シミュレーションの高速化、乱流などの非線形現象のモデル化、材料の特性等を研究するために、流体を始めとする物理現象を部分的に機械学習で置き換えるphysics inspiredやphysics informedな分野の研究が盛んになってきました。

本記事では、機械学習や画像処理を流体領域で活用した3つの例をまとめていきます。

物理シミュレーションの高速化

Deep Fluids: A Generative Network for Parameterized Fluid Simulations
論文リンク: https://arxiv.org/pdf/1806.02071.pdf
著者: Byungsoo Kim, Vinicius C. Azevedo, Nils Thuerey, Theodore Kim, Markus Gross¹, Barbara Solenthaler

物理シミュレーションとは数学モデルや物理モデルを使って流体や剛体の振る舞いをコンピュータ上で再現し実験することで、分野問わず幅広く使用されている。 著者らはシミュレーション対象を流体や気体に限定し、本来は膨大な計算時間を経てシミュレーション画像を生成するが、画像生成に機械学習を用いることで計算時間の大幅な削減を達成した。
学習データにはmantaflowという物理シミュレータで予め生成した流体および気体の画像データを用意し、シミュレーションに入力するパラメータと対になるように学習させた。
機械学習モデルの画像生成速度はシミュレーションを上回り、また学習データにない初期速度パラメータによるシミュレーション生成も可能と結論付けた。

オプティカルフローで流体の振る舞いのモデル化

Robust processing of optical flow of fluids
論文リンク: https://www.dcs.warwick.ac.uk/bmvc2007/proceedings/CD-ROM/papers/paper-286.pdf
著者: Ashish Doshi, Adrian G. Bors

オプティカルフローとは動画中に移動する物体の動きを画像処理によって導き出す手法である。しかし従来のオプティカルフローはフレームにおける特徴量マッチングに依存しているため剛体に対しては有効であったが、流体には適さなかったため、上記論文では流体を対象とした手法を提案した。
著者らは、従来のオプティカルフローでは流体の流れの特徴を抽出しきれない課題があると考え、ナビエ・ストークス方程式に依存する形で提案された方法論は、移流、拡散、質量保存などの一連の処理段階を使用して、流体のオプティカルフローMedH-SFSを提案した。
以下画像の通り、実物画像に対しても流体に対してオプティカルフローが推定できていることがわかる。 しかし、本手法では圧力勾配及び外力が無視できると、密度と温度がほぼ一定で非圧縮性であること、2D画像のみを対象とすることを前提としている。

レイノルズ数による二次元流れを予測するモデル

機械学習を用いた円柱周り流れのレイノルズ数依存性の予測
論文リンク: https://www2.nagare.or.jp/cfd/cfd32/cfd32papers/paper/B04-1.pdf
著者: 長谷川一登, 深見開, 村田高彬, 深潟康二

流体がどれほどの勢いで流れるかを判断する指標の一つにレイノルズ数がある。こちらの研究では、円柱周りの二次元流れを予測する機械学習手法を提案した。
流体の流れ場はレイノルズ数が大きくなるほど非線形性が強くなり数理モデル化が困難になる。そこで著者らはCNNとLSTMを組み合わせたモデルを使用して、複数種類のレイノルズ数からなる流体の流れ場の画像を学習させ、未知のレイノルズ数の流れ場を推定するアプローチをとった。学習データは一番目に紹介した研究と同様に、シミュレーションで生成した二次元流れの画像の連番データを用いた。

まとめ

今回は、流体の振る舞いを機械学習や画像処理を用いて推定する3つの手法を紹介しました。
AnyTech株式会社では、流体が流れる動画からその特性を推定するモデルの研究開発を手がけており、上記3つは特に参考にさせていただいた論文です。 従来の流体シミュレーションは計算時間に多くの時間がかかってしまうことから応用先が限定されていましたが、機械学習や画像処理を活用することでより流体分野や現場による課題解決が進むことが期待されます。